《広尾町を盛り上げる先駆者たち》Vol.2 鈴木牧場・鈴木敏文さん
自然豊かな広尾町の魅力を、イベントの開催などを通して発信しているピロロツーリズム。そんなピロロツーリズムのWEB連載「広尾町を盛り上げる先駆者たち」では、広尾町で活躍しているさまざまな分野のプロフェッショナルをご紹介します。
「牧場から健康と幸せを」の経営理念とし、持続可能な農業を実践する鈴木牧場の鈴木さん
酪農が嫌い⁉ 辿り着いたのは“循環”の大切さ
今回ご紹介したいのは、“グラスフェッドビーフ”や、“十勝の塩”など、なにかと気になる商品を生み出している鈴木牧場代表の鈴木敏文さん。2022年の夏には、オーガニックミルクも販売する予定なんだとか。鈴木さんを取材してみると「先代から酪農を業いとしていて、牛が病気になるのをたくさんみてきました。だから、病気している牛を見ているのも、家族がそれに悩まさせているのも辛かったので酪農が嫌いでした。」と意外な一言からはじまりました。
町内でも海側にある【鈴木牧場】。家族経営でアットホームな雰囲気
そんな酪農を嫌悪する気持ちは、次第に命についてしっかりと考えるきっかけとなり、もっといい循環を生み出したい。“牛の病気を根源からなくしたい”という思いに変わり、オーガニックな酪農を目指すことに。そこで注目したのは“土”でした。
なにごとも牛の気持ちになって考える
搾乳牛舎。牛に不便がないか確認するために、実際にこの場所でねてみたり、首をいれてみたり、常に牛の気持ちを考えているという
鈴木さん「ある日、牛の気持ちになってみようと思って、牛が食べている牧草を食べてみたら苦みを感じたんです。化学肥料が原因だと思いました。」
ピロロ取材班「なるほど。やっぱり牛もおいしい牧草を食べたいですよね。」
鈴木さん「はい。そう思って、化学肥料を使わずにたい肥を戻していい土をつくることでオーガニックな牧草(餌)をつくろうと思いました。」
ピロロ取材班「おー、手間は増えるかもしれませんが素敵な循環ですね。土づくりから牛の飼育に取り組んだ結果、変化はありましたか?」
鈴木さん「はい。牧草は苦味がなく甘さを持つようになり、牛の牧草への食いつきもよくなりました。なにより、徐々に牛の健康状態もよくなり病気も減っていきました。」
牛の排泄物はたい肥となり、土を育てる。その土は牛の餌となる牧草の栄養となる。栄養を蓄えた牧草を食べた牛は健康に育つ。鈴木さんが目指していた良い循環が、ここでひとつ形になりました。酪農が嫌いと言っていた取材序盤は、牛が嫌いなのかとドキドキしましたが、話を聞いていくと牛への愛情が満ちていました。
土だけじゃない!すべては愛する牛のために
牧草の改善を図り、次に鈴木さんが注目したのは“水”と“ミネラル”でした。牛にあげる水は水道水をそのまま使うのではなく、牛の腸内にある良い細菌にダメージを与えないように、軽石や花崗岩を水に入れてエアレーション(曝気)をして塩素を飛ばすことで、まろやかな水に仕上げました。
餌をたべながら、時折塩をぺろぺろとなめる牛たち。このようにしてミネラルを補給するそう
ミネラルはアニマルソルトという動物用の大きな塩の塊をなめて補給します。ここで鈴木さんは『この前、牛が海水でできた塩をなめて喜んでいたな……。海が近い広尾町の環境を活かして、牛のために広尾町産の塩つくってを与えよう』と思い立ちました。それが「十勝の塩」の原点です。牛の健康のためにつくった広尾産の塩は、人間にも好評で、現在はサンタ村などで販売され人気を集めています。
牧場の敷地内の一角に併設された塩づくりスペース
十勝の塩は2種類販売。(左)キリっとした塩味(右)結晶塩は味に丸みがある
これからの鈴木牧場
自慢のグラスフェッドビーフや十勝の塩が入った自家製ソーセージも販売している
「頑張った対価がしっかりと与えられるような仕組みをつくりたい。無理に頑張りすぎず、たのしく六次産業化を図っていきたいです。」と抱負を語る鈴木さん。自然に負荷をかけないように配慮した堆肥・土・草・牛づくりの循環型酪農に注力し、サスティナブルな農業に率先して取り組む鈴木牧場は広尾町の希望の星。今後の活動も目が離せません!
《鈴木さんとできるピロロツアー》
ピロロツーリズムでは、鈴木さんに会いたい方、酪農を知りたいという方がいたらお繋ぎいたします。ピロロツーリズムまでお問い合わせください♪
【牧場案内体験】鈴木牧場をご案内。オーガニックへのこだわりなど直接聞いてみよう!
十勝の塩&グラスフェッドビーフ購入可能店
【広尾町農協Aコープサンタ村】
〒089-2446 北海道広尾郡広尾町紋別48
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鈴木牧場・鈴木さん インスタグラム
文/中村麻矢 撮影/濱谷創平